雪渓で命の危機を感じ、熊にも遭遇した剱岳 2025年7月26-28日

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憧れの山、剱岳へ

これまで関西の山を中心に、北アルプスや中央アルプスを登ってきた。中には、大キレットを含む槍ヶ岳・穂高岳の縦走も行った。そして、ずっと登りたいと思いつつも向かえなかったのが剱岳だ。関西からの移動には時間がかかり、さらに基本的には2泊3日かかるため気軽に向かうことができなかった。

幸い仕事の都合がつき、友人が登りたいということもあり、2人で剱岳に挑戦することにした。なお、高所恐怖症の友人2人は欠席したが、欠席して大正解であった。

【1日目】室堂~雷鳥沢

今回の登山は初日にケーブルカーとバスを使って室堂まで向かい、そこから雷鳥沢・別山乗越を経由して剱沢キャンプ場でテント泊を行う。2日目は剱岳に登頂し、室堂まで戻って山小屋泊。3日目に帰宅というスケジュールとした。

初日は関西からの移動を含むため、室堂行きのケーブルカーは13時40分発を事前にWEBで予約した。混むかと思っていたが、混雑はなく、事前予約なしで一本前に乗ればよかった。

天気予報は晴れ予報だったが、バス乗り場は大雨になっていた。雨の中登山するのかと意気消沈したが、晴れることを祈ってとりあえず室堂に向かった。

室堂に到着すると奇跡的に雨があがっていた。山の天気は本当に変わりやすいなと実感した。

そして室堂からは立山を一望できる。初めての立山だったが、これほど美しいとは思っていなかったので驚いた。

このような絶景を見ながら登山を開始できるのは初めてだ。しかも、この辺りは観光地となっているため、歩きやすくしんどい箇所もない。非常によい出だしだった。

しばらく歩くと、雷鳥沢が見えた。画像下部のテントが立ち並ぶのが雷鳥平のキャンプ場だ。絶景を見ながらキャンプができるなんて贅沢だ。たくさんの人が寛いでいたが、我々の目的地まこの山を越えた先にあるため、泣く泣く前に進むことにした。

【1日目】雷鳥沢~剣沢 熊との遭遇

雷鳥沢を超えて登り始めてすぐに、前方を歩く登山者が立ち止まっていた。挨拶すると、前方に熊がいると教えてくれた。熊は距離が離れていたため、こちらに気付いていないようだった。このままだとこちらに接近してくるため、笛でこちらの存在を知らせることにした。こちらに気付いたのか、下るのをやめて別方向に進んでいった。

しばらく待機してから登山を再開した(本来は下山するべきだったかもしれない)。熊は谷底の方に進んでいた(画像はスマホでズームして撮影。中央の黒い塊が熊)。大きさは子熊ではなく、親熊の大きさでもないため、親離れした熊といったところか。雷鳥沢のキャンプ場にかなり近い場所だったので、熊は身近にいることを知り、テント泊が怖く感じた。下山してくる登山者には、熊の出没を伝えることにした。

剱沢キャンプ場に到着し、テントを設営した。トイレ前が空いていたのでそこに設置したが、トイレからの臭いが気になった。寝るときは臭いが入らないように閉め切って就寝した。臭いのマイナス面はあるものの、目の前の雄大な剱岳を眺めながら過ごせる点は魅力的だった。

今回はハードな登山となるためカメラは持ってこなかった。スマホで頑張って撮影したが、この辺りが限界だった(三脚も無し)。やはり持ってくるべきだったかもしれない。

さて、今回の登山の大失敗を話す。それは寝袋を忘れてしまったことだ。寝袋だと思って持参したものが、昔使っていた雨具だった。。。完全に寝袋だと思い込んでしまい、中身を確認せずにパッキングしてしまった。仕方がないので、手持ちの装備で凌ぐことにした。

7月とはいえ、標高3000m近い場所での寝袋なしは過酷で、夜はかなり冷え込んだ。ダウンや雨具を着込み、エマージェンシーシートにくるまった。しかし、それでも寒くて夜はほとんど寝れなかった。エマージェンシーシートがあれば大丈夫かと思ったが、エマージェンシーシートは薄すぎた。エマージェンシーシートは、非常時の最低限の装備だなと理解した。

【2日目】雪渓で死の恐怖を感じる

上述の通り、夜は眠れず体が冷え切ってしまった。しかし、朝食に温かいものを食べたら一気に回復した。高所登山では、温かいものを摂取することが大切だと学んだ。コーヒーも飲んだら眠気も無くなり体調は万全となった。

今回の登山で一番怖かった箇所を紹介しよう。それは剱沢小屋から剣山荘に向かう道中にある、雪渓のトラバースだ。写真左下から対岸に向かって雪渓をトラバースする。踏み跡はあるが、早朝のため凍っている。

そして右側は谷底まで一直線で先が見えない。軽アイゼンを持ってきていなかったため、そのまま歩き出した。最初は大丈夫かと思ったが、途中でこれは危ないと分かった。しかし、途中から引き返すことはできない。進むしかなかった。幸いストックは持参していたので、バランスを取りながら進んだ。友人はストックも無かったのでさらに危険だった。一歩足を滑らせたら、おそらく助からない。恐怖で心臓の高鳴りを感じ、これまでの登山経験で一番怖かった。大キレットより怖い。無事に何とか対岸までたどり着いたが、返りにまた通るのかと考えると億劫になった。幸い、帰路は氷が解けていたので、滑る危険性をあまり感じずに通過することができた。剱岳を登山する方は軽アイゼンを持参することを推奨します。

【2日目】剱岳登頂

剱岳には、剣山荘で荷物をデポし(宿泊していないため、山小屋横にデポ)、アタックザックに荷物を移し替えて軽量化してから挑んだ。途中で水を補給することもできない。しかも、カニのタテバイやヨコバイといった難所を含む鎖場が幾度も現れ、気を抜けないハードなコースだ。ドリンクは1L持っていったが足りず、危なかった。もう500mL持っていくべきだった。

一服剱、前剱、平蔵のコルといった稜線を辿りついた先に剱岳山頂が待っている。アタックを開始しても、すぐには剱岳山頂は見えず、奥まで進んでようやく姿が見えるといった感じだ。本当に奥深い山で、初心者は来るべきではないなと感じた。

カニのタテバイは画像中央の登山者の目の前にある左側の岩壁を登るコースだ。これを登るのかと驚いた。滑落したら命はない。ここもかなり怖かったが、何とか登り切った。

山頂にはコースタイム通り進むことができた。慎重に進まないといけないので、コースタイム通りの時間は見ておいた方がいいと思う。山頂に着いたら達成感を感じることができた。

下山時に通る難所がカニのヨコバイだ。ここも滑落したら命はない。写真では表現できないが、この下は崖になっている。写真の登山者のいる場所がスタート位置で、ここから左に向かって横方向に進んでいく。最初のスタート位置に足を下ろすのと、最後に足場に足を置くのが怖いと感じる場所だった。

ちなみに、下山はコースタイムよりもかなり時間がかかった。慎重に下山する必要があり、早めることはできないと感じるので、時間に余裕を持たせておいた方がいい。

【2日目】剣山荘~室堂

剣山荘に戻り、コーラを購入した。アタックの水不足で喉が渇いたことも加わり、人生で一番ウマいコーラだった。喉を通る度に、脳内から快楽物質が出ているのを感じた。一生忘れられないコーラで、コーラを販売してくださる剣山荘に感謝したい。

ついでに山荘で食事を取ることにした。牛丼を頼んだが、山なのにそれほど高くなく、しかも大盛りのような量で、味も美味しかった。コスパ抜群である。今回は宿泊しなかったが、もし二度目があるとしたら、剣山荘を利用したいと思った。山小屋泊なら荷物も少ないし、早朝に雪渓を通る必要も無いので、ぜひ利用することをオススメする。

休憩を終え、室堂まで向かった。登頂後の剱御前小舎までの登りはかなりしんどかった。しかし、小舎に着く少し手前で雷鳥の家族に出会うことができた。雷鳥は何度か見たことがあるが、出会えると嬉しい。貴重な鳥なので、遠くから眺めておこう。

帰路で一番しんどかったのが、雷鳥沢からの階段地獄である。往路の際、登ってくる登山者が苦しそうにしていたが、その理由がよく分かった。本当に苦しく、気合いで登り切った。

室堂に到着し、立山室堂山荘に宿泊した。この山荘は個室に宿泊でき、畳の部屋で快適だった。布団もしっかりしていて熟睡できた。しかも、入浴も可能なので汗を洗い流してスッキリすることができた。

【3日目】帰宅

翌朝、室堂を少し歩いてミクリガ池を眺めた。朝の室堂は涼しくて気持ちよかった。始発のケーブルカーに乗車し、関西まで車で帰宅した。しっかり体力を回復させてから帰宅することができたので良かった。

まとめ

立山の絶景、熊との遭遇、雪渓での死の恐怖、剱岳登頂などたくさんの学びと充実感を得られた登山であった。槍・穂高の縦走と並ぶ素晴らしい山行だ。立山だけなら気軽に登れると思うので、絶景を堪能しに行って欲しい。剱岳は経験を十分積み、体力も付けておこう。念願の剱岳に登頂できて大変良かった。

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